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関愛さん(せきめぐむ)

平成14年度 ILA 参加生

関 愛(せき めぐむ)さん

中国とインドにほど近い「世界一幸せな国」ブータン王国。世界の国々が「GNP(国民総生産)」を指標に発展する国づくりを目指す中、心の豊かさを重視し国策に「GNH(国民総幸福量)」を掲げてきたブータンも、近年はテレビやインターネットの解禁を受け、若者を中心に変わってきているようです。平成14年度ILA参加生で、現在市内の高校英語教員の関 愛さんに国際協力機構(JICA)教員海外研修で訪れたブータンのお話を伺いました。

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Q 8月1日~11日にJICA教員海外研修でブータンを訪問されたそうですね。参加のきっかけを教えてください。
A ILAをきっかけに大学で学んだ国際理解教育。教員として長岡に戻ってきて、また世界とつながる活動に参加したいと思っていました。高校2年の時にILAに参加して異文化コミュニケーションの楽しさを知りました。その後、地球広場でボランティアをするなどして、大学では国際理解教育を学びました。教員として長岡に戻り、また活動に携わりたいと思っていたときに、この研修を知り応募しました。

Q 日本では「幸せの国」といわれるブータンですが、実際に訪問してみていかがでしたか?
A 世界で唯一、信号機のない首都をもつ国。ブータンはすごく自然がきれいで、空が近くてどこに行っても絵になる国でした。今回、訪れた首都ティンプーには信号機がありません。景観を守るために信号をつけることを断ったということで、唯一「信号機」と呼ばれる場所は、警官が手旗信号で誘導しています。ブータンの首都は世界で唯一、信号機のない首都だそうです。
  以外だったのは、携帯電話がとても普及していたことです。環境に配慮して暮すことはGNHの理念の1つということで、ホームステイをしたポプジカ村は、オグロツルのために電気を通すことを断った村でした。家には今でも豆電球1つぐらいしかないのに、ホームステイ先には携帯電話が2台もありました(笑)。お坊さん達が携帯電話を頻繁に使っているのも見ました。2003年に携帯電話が導入されてからの普及率はかなり高いそうですが、禁欲主義であるはずのお坊さんでも便利な携帯電話に頼っているのは少し違和感がありましたね。

Q ブータンの研修で何をされてきましたか?
A ブータンではJICAを通してたくさんの日本人が支援を行っています。農業技術支援やごみ削減の啓発活動などの視察や、情操教育(体育、音楽、美術など)の普及のための協力隊が派遣されている学校を訪問してきました。1人ずつクラスに入ってプレゼンテーションを行ったりする機会をいただきました。

Q ブータンでは近年、とても教育に力を入れているそうですね。
A 教育大臣とお会いして感じた教育の大切さ。すべて英語で行われている学校教育。研修のテーマが「教育とGNH」ということで、教育大臣とお会いする機会がありました。1976年に先代の4代目国王が「GNP(国民総生産量)」という言葉を「GNH(国民総幸福量)」にかえて、国民の総幸福量を高め、精神的な豊かさを助長しようと国策に掲げたとのことですが、その後、鎖国状態だったブータンをオープンにしたことで多くの情報が入ってきて、外国文化を知った若者を中心に良くも悪くも変わってきているそうです。そこでブータンの持つ良さや独自性を残して行くために、教育をとおして伝えていきたいということでした。カリキュラムにも「モラル・エデュケーション」というGNHの理念とチベット仏教を学ぶ時間が設けられました。教育大臣と話すなかで教育の大切さをすごく感じました。国語はゾンカ(ゾンカ語)ですが、1980年代半ばから学校教育はすべて英語で行われており、子ども達は皆、流暢な英語を話します。教育は無料ですが、義務教育ではないそうです。昔は農業国ということもあり、学校に行くよりも働き手として家に残るという風潮があったようですが、近年は教育を受けさせるという考えが主流となっているようです。

Q この訪問をとおして感じたこと、考えたことを聞かせてください。
A 国民の9割が「幸せ」と答えたのは、個人としての「I am happy」ではないという気がします。日本では、「GNP」だけが1人歩きして「世界一幸せな国」などと言われています。私も最初はそう思っていました。訪問して、ブータンでは国民がすごく国王のことを慕っていて、国民と国王の距離がとても近いと感じました。そして国王はいつも国民の目線で考え、国民を信頼してくれている。国税調査で9割を超える国民が「幸せ」と答えたのは、個人としての「I am happy」という概念ではなく、国に根深くチベット仏教の教えも影響し、国王への感謝や、国としてのこの環境を与えられていることに幸せと答えたのではないかと感じました。
 今の日本を見ても、自分の満足や事故の利益「I am happy」のために働いているうちは、誰かの幸福量を下げることになってしまう。結局、幸せというのは物質的なものでも、お金でもない。かといって、家があって、家族があって、それで満足と終わらせてしまっては向上心はわかない。私なりの答えもまだ出せずにいますが、少なくともブータンの人の気質は日本人が忘れてしまった、すてきなものだと思いました。

Q 最後に関さんのこれからへの思いなどがあったら、お願いします。
A 原点はやはりILAに参加したこと。私の原点には「異文化コミュニケーションのおもしろさを伝えたい」という思いがあり、そのきっかけはやはりILAです。ILAでの体験を出発点として、地球広場のボランティアや国際理解教育の勉強、カナダ留学、今回のブータン訪問などへとつながっています。
 「英語わかんないし、日本にいるから必要ない」とか「上手くしゃべれないから」などという言葉をよく生徒から耳にしまますが、英語教員として英語を上手く話すことが大事なのではなくて、英語をツールとしてコミュニケーションの幅がすごく広がるということを伝えていきたいですね。そして、せっかくいろんな人からきっかけをいただいてよい経験をたくさんさせていただいているので、それを発信していかなければもったいない!と思っています。

*機関紙「HOWDY」第66号に掲載された「協会OB・関 愛さんが見た幸せの国ブータン」より
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